中途視覚障害者の点字学習のための触知辞書のデザインDesign of the tactile dictionary for braille learning of acquired blindness
于 静瑶
日本における視覚障害者の数は全国で31.2万人である(厚生労働省2016年の推計)が、潜在的な人数はそれを遥かに超えており、その90%以上が中途視覚障害者である。視覚障害者が情報を取り入れるための重要な手段として点字があるが、中途視覚障害者が点字を独習するための教材は非常に少ないのが現状である。今回の研究ではデザインを通じてこの問題を解決するためのアイテムとして、中途視覚障害者の点字の独習を補助するための辞書を作ることを考えた。プロセスとしては、調査、設計、実験、再設計の方法によって、製品を検討及び改善した(図2、図4、図5)。辞書を設計する過程で、視覚障害者が触知しやすい図形の一般的特徴について実験を通して考察した。成果をまとめると次のようになる。
デザイン面の成果
本研究では中途視覚障害者の点字独習を支援するための「点字-墨字」および「墨字−点字」辞書を作った(図6、図7)。このような特殊な用途の辞書には前例がなく、主に触知しやすさの観点から客観的な知見を実験によって集めることで、目的にかなったデザインを実現することができた。具体的には以下の項目がデザイン面での成果といえる。
・墨字は立体コピーで線状の隆起で表現する。
・点字の並べ順は、点の数に基づき定め、同一点数の文字は、点の位置を基準に並べる(図3)。
・目的のページを見つけやすくするために、ページタブをつける。
理論面の成果
辞書をデザインする過程での墨字のスペックの検討を通して、中途視覚障害者にとって触知しやすい文字の形の特徴も考えた。本研究の実験によって、交点より頂点のある文字の方が触知しやすいということがわかった(図1)。それに加え交頂点がない文字も触知しやすいことがわかった。
交点で交わる線を延長すれば、交点の存在が認識しやすくなって、触読しやすくなる。また、交点のない文字は画間の空間を少し広げれば、触読しやすくなる。
この結論は今後視覚障害者のための図形設計に応用できると考える。
図1. 交頂点
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図2. 「点字-墨字辞書」試作
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図3. 「点字-墨字辞書」の点字を並べる順番
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図4. 文字改善の実験結果
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図5. 改善文字の例(グレー部が改善した部分)
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図6. 点字-墨字辞書
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図7. 墨字-点字辞書 |