宮城県大和町龍華院庭園の石組みと配置構成にみる思想世界の表現についてIdeal Representation through the Composition with Rock Arrangements in Garden Design of Ryugein-temple, Taiwa-town, Miyagi-prefecture; A case study of modern Japanese garden in Sendai Region
靳 嘉偉
ー仙台地方における近現代の日本庭園に関する事例的研究ー
日本庭園の歴史と景観の秀逸さは世界に類をみない。最高峰とされる事例の多くは京都をはじめとした西日本に多く、その形式も池泉の有無、回遊式、枯山水、露地庭、借景など多彩なものがあるが、東北地方の庭園研究は必ずしも進んでいない。「杜の都」と呼ばれた仙台にも多くの庭園が存在していたと考えられるが、史跡や寺院の一部に古いものが残るほかは近現代のものが多く、現存する庭園の特徴を解明することは重要である。
一方、近現代の寺院庭園で有名な存在として、重森三玲がいる。その弟子にあたる小山雅久は宮城県出身で、県内に実作が多く残っている。本研究では、小山が手がけた龍華院庭園を事例として、その石組みと配置構成にみる思想世界の表現について考察する。
龍華院は、宮城県黒川郡大和町東部に位置する臨済宗寺院である。A西南庭、B南庭、C参道庭、D主庭、E西庭、F北庭、G中庭と、計7ケ所の庭を有する。重森流技法に連なる枯山水を核とした作庭がなされている。まず素材面を整理すると、枯山水庭園では、役石を用いた石組が景観のポイントとなるが、(1)施主支給による台湾石、(2)福島産石材、(3)鳥海石などがよく使われていた。すなわち、寺院の側でも庭園の構想があったと考えられ、昭和後期から平成期にかけては建材、木材の輸入が進んだ時期でもあり、構想に合致する石材が集まっていた。こうして、現場の地形や植生を下地としながら、効果的に石材が配された。
また配置構成面では、自らを牛に例え悟りの物語をモチーフとした「十牛図」、試練を乗りこえる「龍門瀑」、浄土に渡る「二河百道」、犠牲を払って教えを請う「達磨絵」など、仏教系の物語をモチーフとした思想世界とその具現化が図られていたことが分かった。