仮設住宅の個と群のデザイン
鈴木 茉莉奈
1、背景と目的
東日本大震災を通じて、私たちの生活がどのように成立し、営まれ、それらの基盤の問題点が現れた。地震・津波にたいして私たちができること、地震・津波によって被害を受けた道路、鉄道、電話、電気、食糧、水道といった生活基盤の被害にたいして、私たちが出来ることとは、何であろうか。「住まい」に着目し、考える仮設住宅、個と群の住みやすい環境を提案をしていく。
本研修では、「復興まちづくりに向けた創造力を育む仮設住居支援プロジェクト」というプロジェクトの中で、仮設住居者が安心して暮らせるような都市マネジメントをしていく。本学から近い「長町仮設住宅」において、仮設入居者の暮らしを支援している地元NPOと連携して住居支援プログラムを実践し、復興まちづくりへの意欲と創造力の向上を図っていくことを目的とする。その中で、群の配置設定や個の住空間の見直しを実践の中で問題点と課題を抽出し、提案を重ねていく。最終的には、二年間の研究の中でハウスメーカーや自治体に伝え、今あるものを改善できるような、新たなモデルを提案する。
2、方法
3、研修内容
4、個のデザイン計画
仮設住宅は、新しい家を建て替えるまでの間の家ではない。生活を快復し今後良好な住環境へのステップアップをするための重要な場所である。住みやすいよう仮設住宅に工夫をしていきながら、個と群のデザイン計画をたてていく方向である。
支え合いながら自分の手で、仮設住宅の生活をより良いものにしていき、人の行為・行為に必要な道具(モノ)・行為とモノを含めた場の提案に繋げる。「ソフトを重視してハードを整える」ところまで計画していく。
4-a.現状
仮設住宅の居住者に問題点を聞くと収納が少なくデッドスペースが多いという声を聞く。軒先には、季節もの(ヒーターや扇風機)をしまうスペースもない。
また、床下に雨が入ってしまい、湿気がひどく結露が多い。室内環境についての意見も多くふれあいサロンでは、聞くことができた。
4-b.計画
・住み手の問題点、課題を抽出
・春夏秋冬の場とコトの提案を出していく
・住環境の改善案
・共にやる事によって支え合う →支え合う事が欠落くている
・緑を増やす、畑をやりたい人がいるため、個としての畑の提案
5、群のデザイン計画
5-a.現状
長町仮設住宅は、地域ごとの入居はごく一部で、入居者の地域はばらばらなため、顔見知りがいないという現状。子供が少なく高齢者が多い。広場は、砂利がひかれて高齢者には歩くのが困難で、休憩をできるような場所もない。散歩の休憩場所が欲しいという意見も聞く。
また、バリアフリーエリアは、スロープが付いているが内外の段差があり、バリアフリー住居とは言えない。
5-b.計画
・最小の敷地に最大の収容。
・自治会、町会といった従前のコミュニティ単位で対応できるよう、住戸の区画形成を見直す。
・長期にわたる集団生活に対応できるよう、共用空間を充実させた建物配置に努める。
5-c.最終提案までの課題
①被害の広がりと大きさから本格復旧まで時間がかかり、入居期間が長期化する恐れがある。
②被災者の多くが高齢者であり、入居後も共同で助けあうことが不可欠。
③世帯単位の入居ではなく、集落やコミュニティ単位での入居が望ましいが、公平性の観点から難しくなり、入居後のコミュニティ形成が重要になると思われる。→仮設住宅があっても住居後のコミュニティ形成がしやすい住宅の配置計画への配慮が重要となる。
参考文献
仮設のトリセツ 新潟大学工学部建設学科岩佐研究室
東日本大震災・応急仮設住宅によるコミュニティづくりのための配置計画 日建設計総合研究所