学習コミュニティの情報共有支援ツールの開発
櫻井 清隆
[概要]
新しいことを学び始めるには、多くの労力と時間が掛かる。東北工業大学両角研究室に所属する学生にも同じことが言える。デザインを専門的に学んできた学生がWebサイトやWebアプリケーションを開発する必要があり、一年間の研究の中で、ソフトウェア開発技術を習得することに多くの労力や時間を掛けているのが現状である。
本研究の目的は、新しくソフトウェア開発技術を学ぶ学生にとって学びやすい環境を作ることである。そのために以下の2つの機能開発を行った。
1)ユーザーオリエンテッドな投稿フォーム
2)スキルメーター
[両角研究室Webサイト「morozon」とは]
「morozon」とは、ソフトウェア開発技術の学習を支援するWebサイトである。学生が学んだ知識や情報を「morozon」上に投稿し、共有することで学習支援を行おうと開発が進められている。
[両角研究室の研究プロセス]
両角研究室に所属する学生の一年間の研究プロセスを説明する。
a.調査
対象となるユーザーの調査を行う、実際にユーザーの活動に参加し、問題点や改善点を抽出する。
b.提案
調査から得られた問題点・改善点に対してどの様にサポートを行っていくか提案する。
c.開発
提案物の多くがWebサイトやWebアプリケーションであり、ソフトウェア開発技術を学びながら制作を行っていく。ここで、本研究で制作した「morozon」を利用することで学びの支援を行う。
d.検証
実際に制作した提案物をユーザーに使用してもらい、更に改善をする。検証から新たな要求を抽出し、開発と検証を繰り返し行っていく。
[制作]
1)ユーザーオリエンテッドな投稿フォーム
学生が学んだ知識や情報を投稿する際に、ある程度入力する項目が決まっている。投稿フォームのユーザビリティの向上を目的とした開発を行い、入力フォームの項目を絞り、項目ごとに入力できるフォームを制作することで投稿しやすいフォームになると考えた。
2)スキルメーター
学生同士が学び合いを行う際に、お互いの能力を把握することが必要であると考えた。お互いのスキルの可視化をすることで、学び合いや勉強会に利用できると考えスキルメーターの開発を行った。
[検証]
開発した2つの機能を実際にユーザーとなる人に使用してもらい、提案物の効果の検証を行った。
1)投稿フォームのユーザビリティの評価
○検証方法
両角研究室に所属する学部4年生4名を対象に検証を行った。既存の投稿フォームと本研究で制作した投稿フォームの両方を使用してもらい、比較を行った。
○検証結果
4名中3名が今回制作したフォームの方が入力しやすいと答えた。既存のフォームの方が使いやすいと答えた、1名は既存の投稿フォームと同じものを普段から使用しており、レイアウトを考える労力が他の3名に比べて低いことがわかった。入力項目を絞ることで、入力の際に迷うことが少なくなった。
2)スキルメーターの有効性の検証
○検証方法
東北工業大学XDコース3年生7名を対象にスキルメーターを使用してもらい、フォーカスグループを行った。
○検証結果
コミュニティ内のメンバーのスキルを知ることができるのは良いという肯定の意見が得られた。しかし、スキルの更新タイミングがわからないことや更新しても通知がされないなど、使い方の面で新たな要求が得られた。
[結論]
本研究では、ソフトウェア開発技術を学ぶ必要のあるコミュニティの学習支援を目的として、2つの情報の可視化を行った。
1)学んだ情報の可視化学んだ知識の可視化を行うために、投稿フォームの改善を行った。
a.項目を分割して入力することで、投稿者の作業が分割され、投稿者にとっての労力が少なくすることができた。
b.入力フォームのレイアウトと記事のレイアウトを近づけることで、ユーザーにとって投稿される記事のレイアウトの想像がしやすく、レイアウトを考える必要がない。
2)能力の可視化コミュニティで学習を行っていく際にお互いの能力を確認できるように、スキルメーターの開発を行った。
a.自分の能力を確認できるので、足りない能力がわかる。
b.在学中の先輩に話を聞くのに利用できる。
[参考文献]
1)両角清隆 コミュニティ活動の支援のデザイン第5回デザイン学会第1支部大会 2013
2)COOKPAD[ h t t p : / / c o o k p a d . c o m / ](2013/12/18 アクセス)